ドミノとさんすう

ドミノ

スウちゃん(仮名、6歳)は保育園から帰るととにかく「遊びたい」。眠っていないあいだはとにかく遊び続けなければ死んでしまうというくらい遊びたい。といって家や近所に子どもはいないから、一人遊びじゃなければ大人が相手をすることになる。いろんなゲームもやってきた。カルタ、すごろく、どうぶつしょうぎ、オセロ……。そして最近の流行はドミノだ。

【DOMINO W6 in The Wooden Box】木箱入プラスチック製ドミノ W6 白黒Premium Set of 55 Double Nine Dominoes with Wood Case, Brown いまうちにあるのは私(=スウちゃんの父)が学生の頃に麻雀牌も売っているようなおもちゃ屋で買ったもの。でもいま日本でちゃんとしたもの[1]はあまり売っていなさそうだ。「木箱入プラスチック製ドミノW6白黒」だと真ん中に鋲がないなあ。Amazon USA のダブル・ナインは鋲あり。日本から買うと送料が本体と同じくらいかかってしまう。

ルールは「ファイブ・アップ」(参考1参考2)。

しばらくは点数関係なしで、札の出し方を学習。ゲームとなれば子どもは簡単に覚える。

続いてプレイ中の得点。どれを出せば得点になるかなんて戦略もないのでとにかく出せるものを出す。たし算ができないので、出したものを大人が計算してやる。「5の倍数だったら、5で割った商が得点」なのだが、意外に早く5の倍数を覚える。「15」→「3点!」、「20」→「4点!」のように[2]

終了時は「相手の手に残った目の合計を5で割った値(うちでは端数切り捨てというローカルルール)」でやっているが、これも合計を大人がやってやれば「その中に5はいくつ入ってる?」と聞けばほぼ得点を出せる。九九で言えば「5の段」が、それも九九とは全然別の形で頭に入っているらしい[3]。ゲームだとこんなことまでできるんだなあ。

まともな勝負には程遠いが、とりあえずなんとかゲームの体をなすことはできる。さて、大人は手札を元に計算しながら出せるので、強い。同じ札でもあっちに出せば得点できるのにこっちに出すと得点できないということも起こる。子どもはだんだん悔しくなってくる。ここで「たしざんができるようにならないとつよくなれないねー」ということになる。

たたみかけるように、ここでダブル・ナインのセットに替えて同じゲームをやると目の数がぐっと増えるので、それまではたし算できなくても目を数えあげて何とか出来ていたものも追いつかなくなり、いよいよ悔しさをつのらせる。

さんすう

1年ほど前、何の拍子だったか忘れたけれど数に興味を示して、そのうち「同じ数を2回」、つまり「2と2は4」「3と3は6」「4と4は8」……を言えるようになっていた。九九で言えば「2の段」に相当する。せっかくそういう興味が出てきたのならちゃんとやってあげようか、などと考えて、道具を揃えてみた。

カラフルマスキューブ テキストには「わかるさんすう 1」。かなり古くまた検定は通しはしないけれど「教科書」としてしっかり練られたものということを知っていたので、これにしてみた。Amazon では手に入りにくいが、ふつうに街の本屋さんで注文したら簡単に入手できた。

わかるさんすう 1」では、「タイル」を使う。手作りでもいいけれど、横着して買うことにした。「タイル」ではなくて「キューブ」。似たような商品もあるが、安さと、それに「接続できる」ということでこれにした。またちょっと別のもので「100だまそろばん」というのもよく評判を聞くが、やはり自由さの点でキューブにした。

2カラーせんせい 紙が潤沢に使えるのであればそれがいいのだろうけれど、きりがないのでうちではもっぱらおえかきボードを活用している。

いまは2色の「2カラーせんせい」なんだな。うちにあるのはおさがりでもらった「スーパーせんせい」で1色のもの。元の持ち主は4歳くらいでもう飽きて遊ばなくなったからと、スウちゃんが1歳か2歳のころにもらったものだが、うちではいまだ現役。でもこういう用途だと、もうすこし画面が大きく、また解像度が高いといいなと思う。

さてさて、今から1年ほど前にこうして「さんすう」をやりかかってみたけれど、スウちゃんははじめのあいだはともかく、ほどなく興味を失ってしまった。こちらも是が非でも早期教育をとも思っていなかったし、ただ、もし数に興味を示すのなら(ほら数学の天才は幼児期からそうだと言うでしょう)その芽を摘まなくても、という程度の考えだったので、めったに日の目を見なくなっていた。つまりスウちゃんは数学に関しては天才ではなかったわけだが。

ふたたび「さんすう」

時は戻ってふたたび現在。ドミノのおかげで、たし算をできるようになりたい、という気がスウちゃんに俄然湧いてきた。こうなると見向きもしなかったテキストとキューブ(ブロック)に取り組み始める。

いまは

  • 5-2進法は強くこだわらないことにする。本人がどちらが楽かまだわからないので。
  • たし算を同時にひき算も教える。「7は5と2だから……」のように、たし算の過程でひき算に相当する部分が出てくるので。
  • ほとんど最初から筆算(縦書き)にする。この先の繰り上がりを見据えて。
  • 適宜ブロックを使う。
  • いまのところ、素過程を網羅的に、とは考えない。これは「水道方式」のいいところを落としているのかもしれないけれど。少し先にひき算(13−7など)をやるときに困るかもしれない。そのへんは行きつ戻りつやればいいか。
  • 文章題も適宜。逆に「たし算の問題を作る」ような作業も多めに。

という感じで進めている。

自由な発想

スウちゃんはすごろくなどのゲームやドミノでサイコロ(の目の形)に親しんでいたからか、「6は3と3」の意識が強い。5-2進法のための「6は5と1」とはなかなかならない。そこで「6+3」を計算する際はブロックを3×2に並べ、そこに3つのブロックを加えて3×3の形にし、「こたえは9」になる。どうやらイメージ先行らしい。

この先の発展のためにはどうかとも思うが、まだカリキュラムに沿った学習をしていない子どもの発想は自由でおもしろい。「8−2」は、まず2×2×2の立方体を作って「8」。なんだそれ。3次元じゃないか。2の3乗だよ。それから2つをとり、変形させて3×2にして「6」。このへんはボール紙で作ったタイルじゃなくて、縦横に接続できるカラフルマスキューブにしていたからこそだったかもしれない。

世の中、算数だけで出来ているわけではないから、小学校に入って型通りの授業が始まるまではこの自由な発想を楽しむことにしよう。

さて、こんな調子でスウちゃんはドミノが上手になれるだろうか。

  1. と言っても、うちのもさすがに象牙製ではない。ドミノ倒し用ではなく樹脂製の適度な重みのもの。
  2. これと同時期に時計の分針を読めるようになり、「ドミノといっしょ!」と叫んでいる。
  3. いまの段階で九九の暗誦なんて絶対にやらせたくない。

“ドミノとさんすう” への 3 件のフィードバック

  1. 分子モデルのおもちゃを検索していたらここにたどり着きました。学生の時に分子構造を立体的に見れなくて、解答用紙を曲げたりして問題を解いたことがあり、こどもには立体的にモノを見れるようになって欲しいと思いおもちゃで探していました。とても興味深い記事ばかりです。
    4才の息子に公文をやらせようかと考えていましたが、「わかるさんすう」という教科書?があるのですね。とても良さそうなので取り寄せてみようかと思います。

    返信
    1. コメントありがとうございます。うちのスウちゃん(仮名)はこのコメントを書いている時点では1年生の終わりころです。この記事の頃の効果がどう出るのかまだよくわかりませんが、ともかくいま(も)言えることは「楽しいことは楽しい」ということですね。勉強を勉強らしくやったらこんな歳では乗ってきません。でも遊びとなったらうんと努力します。ドミノはちょうどよかったですね。たし算ともかけ算ともわり算とも意識せずに、でもこの遊びに関するところだけはすらすらとできるようになりました。このくらいの歳の子どもには、遊び=生活ですから、これでいいんだと思います。

      “公文式”と、「わかるさんすう」の“水道方式”は、ちょうど対極にあるものだと私は思っています。調べてみると奥が深いですよ。私の考えでは、“公文式”を自分の子どもにやらせてみようとはまったく思いません(私自身、小学4年生ころに半年ほどの経験があって、とても苦痛でした)。と言って“水道方式”万歳という訳でもないのですが。「わかるさんすう」は学校の教科書のようなもので、それだけで足りるものではありません。自習にも向いていません。それを使って指導する“先生”の役が必要なものだと思います。この本だけで判断されませんように。

      返信

Mako へ返信するコメントをキャンセル