これまでにも何度か書いているように、私自身は個人的には「日本語のある程度の長さのまとまった文章には、ゴシック体より明朝体のほうが向いている」と考えています。Web ページにおいても、です。
一方で、「Web ページはゴシック体」という意見が数多く見られます。おそらく、単純に「明朝派」か「ゴシック派」かで言えば、「ゴシック派」のほうがかなり多数のような印象があります。
システムフォントの歴史
いろいろ思い出すために、2000年頃以降のシステムフォント—大きなシェアを占めていた Windows と Mac にデフォルトで装備されているフォント—について、ざっと調べてみました。
Windows
2001 | XP | MS明朝ゴシック 2.30 MS明朝 2.31 |
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2006 | Vista | メイリオ 5.00 MS明朝ゴシック 5.00 MS明朝 5.00 (JIS X 0213:2004) |
2013 | 8.1 | 游ゴシック 游明朝 |
Mac
MacOS 9.2.2まで | Osaka 平成明朝 リュウミンライト-KL | |
2001 | OS X 10.0 | ヒラギノ角ゴ Pro W4・ヒラギノ明朝 Pro W3 |
2007 | 10.5 | ヒラギノ角ゴ ProN W4・ヒラギノ明朝 ProN W3 |
2013 | 10.9 | 游ゴシック体 游明朝体 M |
フリーフォント
私自身はこの時代より前から今日に至るまでずっと Linux (Debian) を常用していて、それにはデフォルトとか標準という考えがなく好みのフォントを使います。もう記憶が確かでない部分もあるのですが、主流だったと思えるものを拾い出してみました。
1998-1999 | 渡邊フォント |
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2000-2003 | Kochi |
2003-2004 | Sazanami |
2007 | IPAゴシック・IPA明朝 (単体配布) |
2010 | IPAexゴシック・IPAex明朝 |
2010 | Takaoフォント |
2014 | 源ノ角ゴシック / Noto Sans CJK JP |
2017 | 源ノ明朝 / Noto Serif CJK JP |
参考:ブラウザーの歴史
1992 | mozaic |
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1994 | Netscape Navigator |
1996 | NN3, IE3 |
1997 | NN4 |
2001 | IE6 |
2003 | Safari (10.3から。それ以前(10.2)の標準ブラウザはIEforMac) |
2004 | Firefox 0.8 |
2006 | IE7 |
2008 | Chrome |
漠然とですが、
- 2001–2010年ころ、Web ページにとって明朝体は、技術的に「使い物にならな」かった
- そのため、その頃とそれ以降、日本語の Web ページは圧倒的にゴシック体を主体としたものが多い
- その環境で育った人たちは、もう「Web ページはゴシック体」が当たり前であり、技術的な問題が既に解決されても、むしろ明朝体だと違和感がある
のようなことではなかろうかと考えています[1]。
2001年のMacOS Xにヒラギノというのは本当に画期的だったとは思うのですが、何しろシェアが違いすぎ、それにあぐらをかいた Windows のために「暗黒の10年」だったと言っても過言ではありません。ブラウザーの IE6 天下と軌を一にしています。
話はややずれますが、ハードウェアとしてのディスプレイが CRT から LCD になっていったのものこの頃でした。私が切り換えたのはだいぶ遅めの2005年ころでしたが、CRT ではいい具合にボケていた文字の輪郭が LCD だとくっきりしすぎて、文字として美しくなくなったのを覚えています。それからアンチエイリアスとかヒンティングなどを意識することになりました。
- 翻って考えると、私の「日本語のある程度の長さのまとまった文章には、ゴシック体より明朝体のほうが向いている」という考えも、WWW 以前の、印刷物に接する時間が長かった(印刷物は言うまでもなく、本文は明朝系であることが圧倒的に多い)影響が強いのかもしれません。↑