『サイトの拡張性を飛躍的に高める WordPressプラグイン開発のバイブル』

事前にレビューする機会を与えられた書籍『サイトの拡張性を飛躍的に高める WordPressプラグイン開発のバイブル』が発売されました。

タイトルのとおり「プラグイン開発」に焦点を当てたもので、これまでの WordPress 関連書籍と一線を画しています。

まえがきに「開発者をターゲットとした WordPress の専門書」とあり、WordPress 固有のプラグインの仕組みの解説はもちろん、WordPress プラグイン開発に適した環境の構築から、コーディング規約、テスト方法まで、懇切丁寧に書かれています。これらをまとめて一瞥できるのは大変ありがたいことです。

WordPress の特徴としての GPL についてもひとつの章を充ててじっくりと説明されています。その上でのビジネスモデルにも言及されており、一読の価値があります。

そして開発したプラグインを公式ディレクトリで公開する方法も紹介されています。評者はこの本の出る少し前に初めて公開を前提としてプラグインを書き、公式ディレクトリに登録してみました。まったく大したものではありませんが、「公開」を念頭に置くと適当なことはできないので、ウェブであちこち検索して回ってできるだけきれいに、間違いのないようにとあらためて勉強することになりました。そのときにこの本があればかなり近道ができたはずです。

さて発売前のレビューの際に、細かな用字の指摘のほかにもやや大きな修正や加筆を必要とするようなコメントを著者に返しました。前者はともかく後者については、たぶん時間的にも分量的にも制約が大きかったのでしょう、残念ながら反映してもらうことができなかったものがありました。

そのひとつが、第8章「管理画面」の特に8-3節「管理画面を使って独自の設定を保存する」についてです。著者たちがあまりにプラグイン開発の経験に富んでいて、ずっと以前から WordPress に精通しているためか、旧来の手法による記述になっています。古いプラグインを読んで理解するにはいいかもしれませんが、これから新たに開発する場合にはこの箇所の記述のようにする必要はありません。WordPress の現在のバージョンには、より簡便で安全な手法 (Setteings API) が用意されています。せっかくこの年になって出版される日本語で初めて(たぶん)のプラグイン開発の解説書ですから、ぜひ Settings API に触れてほしかった—というか現状の8-3節と差し替えてもいいくらいでは—と思います。

そういった点はあるにしても、全体にこの本から受けることのできる恩恵は大きなものがあります。

評者は WordPress の単なるユーザーとなってから数年の時間が経過していますが、実際にプラグインを作ってみること、それも公開しても恥ずかしくないように書いてみることをやってみてはじめて、それまで適当にしか理解していなかったことについてもきちんと知る必要が出てきて、学ぶことが非常に多くありました。その経験をとおして WordPress そのものについての理解、ほかの人たちが作った便利なプラグインについての理解がかなり深まりました。

そういった意味で、この本が「ターゲットはプラグイン開発者」と謳っていても、一般のユーザーも手にとって読んでみるといいと思います。そして簡単なものでもいいので(最終的には公式ディレクトリに登録はしないにしても)「正しい」作法でプラグインを書いてみると、 WordPress をより理解し活用することにつながるでしょう。