スウちゃん (仮名、3年生) は、最近とくに退屈していて、うっかりするとぼーっとテレビを見続けている。そんなにテレビを見るんじゃないと言うと「じゃ、あそぼう!」となるが、トランプなども飽きてしまった。
ふと、父である私がちょうどいまのスウちゃんの歳のころにやった、紙と鉛筆で遊ぶゲームを思い出し、やってみることにした。当時は意味もわからず「しきんだん」と呼んでいたが、これが“至近弾”と知るのはもう少し後のことだった。いま調べてみると Wikipedia にある「海戦ゲーム」にそっくりで、簡略化されたローカルルール版だったのだろう。
ゲームの概要
- 2人で対戦する。
- それぞれ手持ちの紙のマス目に自分の軍艦3隻を置き、相手には秘密にする。交互に「砲撃」して、相手の艦をすべて言い当て (撃沈し) たほうが勝ちとなる。
- マス目は 8×8。行・列番号をつける。
- 広くしても狭くしてもいいだろう。行・列番号は、スウちゃんの今後の算数の学習を考慮して、それに合わせた。
- 最初の軍艦の数は3隻。区別はしない。
- 広さに合わせて増減させてもいいだろう。
- 交互に「砲撃」する。ただし砲撃の代わりに「移動」してもよい。
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- 「砲撃」は、「(2,3) に砲撃」のように、座標を伝えることで行う。1回につき1発のみ (移動する場合は砲撃できない)。
- 砲撃の「射程」は、自艦の周囲1マス分のみ。つまり自艦のまわり8マス (斜めも含む) のみ砲撃可能。
- 「移動」は、「北へ1マス」のように、方位と距離を伝える。どの艦が移動するかは伝えなくてよい。
- 移動は、東西南北 (上下左右) の直進のみ。
- 移動は1回につき1隻。移動する回は、砲撃できない。
- 砲撃の宣告を受けたら、「命中」「至近弾」「異常なし」を答える。
- 「命中」は、沈没を意味し、艦を消去する。
「至近弾」は、着弾点の周囲1マス分、まわり8マス (斜めも含む) のいずれかに艦がいることを意味する。
「異常なし」は、着弾点の周囲1マス分内に艦がいないことを意味する。
ゲームの途中で気づいて取り決めたが、「自艦のいるマスを砲撃すると、自艦も沈没する」とした。
練習
はじめからルール全部を教えるのは大変だと思ったので、次のようなステップを数回ずつ繰り返しながら徐々に習得してもらった。
- 5×5マス。艦は1隻。射程の制限なし。移動もなし。これで座標の読み方、砲撃の宣告方法を練習した。
- 5×5マスに1隻で、射程あり。これで射程の制限と「至近弾」の応答を練習した。
- 8×8マスに広げ、艦は3隻。移動もありにして、ぜんぶのルールを導入した。
これで無理なくルールを覚えることができた。
ゲームの楽しみ
トランプなどに飽き飽きしていたスウちゃんはすぐにノッてきて、何度も繰り返しやりたがった。頭を使うのが楽しいらしい。数回のうちにメモのとり方も工夫して上手になった。だんだん自分の砲撃による探索と、相手の砲撃の着弾から相手の艦の位置を絞り込めるようになった。そして「自分の行動が、相手に自分の情報を与えてしまうこと」を学んだ。
さらに繰り返すうちに、自艦の配置を適度な間隔にして相手を幻惑させること、狙われている艦ではなく別の艦を移動させて (このルールではどの艦か宣告しなくてもいい) 情報を撹乱すること、など高等戦略まで身につけたのだった。
試しに、調べてみて出てきた「海戦ゲーム」もやってみた。ルールが複雑になっているが、楽しさはあまり変わらない。むしろ、どの艦が移動するかがあからさまになるので、この点はローカルルール版のほうが面白みがある。
そのうちメールやチャットを介して「通信チェス」みたいにやったりできるかな、もっと先にはコンピュータでこのゲームのプログラムを組みたくなったりしてくれないかな、などと父である私は思っているのであった。