第何何曜日

日付を尋ねる場合に「何年何月何日」のようにあいだに別の語が挟まればいいのだが、「第何何曜日」というのは言いにくい[1]。次のような事情で「第何何曜日」を求める方法を検索したく、この単語でいいのだろうかと思ったが、やはり仕方ないのかこのまま書いてあるのがいくつか見つかった。ともあれ意味は通じるし、そもそも未知のところを「何」に置き換えればほぼそのまま表現できる日本語は強力だ。

さて、その事情というのは……うちの資源ゴミの収集日は「第 2, 4 月曜日」だ。うっかり忘れてしまうことがしばしばあるので、収集日 (の前日) に自分宛にメールを飛ばそうと考えた。cron では「第何何曜日」という指定はできないので、スクリプトのほうで判定する。せっかくだからメモしておく。

Y 年 m 月 d 日は、その月の第 i の w 曜日か

これは検索ですぐに見つかった。曜日は、PHP なら求める手段は用意されている。

$i = floor(($d+6)/7);
$w = date("w", strtotime($Y . $m . $d));

Y 年 m 月の第 i の w 曜日は、その月の d 日か

上の逆だから簡単だと思ったが、何度か試してみてようやく

$w1= date("w", strtotime($Y . $m . "01"));
$d = $i*7-6 + ($w+(7-$w1))%7;

とした。ここで $w1 は当該月の 1 日の曜日である。$d が当該月の最大日を越えない判定が必要かもしれないが、ゴミ収集日はたいていの場合 5 回目の曜日には設定されないので省略した。

【追記】5年半ものあいだをおいて、続きを書きました

ところでこのために PHP マニュアル日付・時刻関数を見ていたら、日の出時刻日の入り時刻を返す関数というものまであるではないか[2]

現代の都市生活者には日の出・日の入り時刻より、ゴミ収集日を返す関数のほうがありがたい。……と思ったら、この日の出・日の入り時刻関数は宗教上の必要から作られたらしい。別に農耕狩猟生活のためというわけではなかった。

  1. 「第何週の何曜日」というと誤解を招く。今月はたまたま 1 日 が日曜日だからいいとして、たとえば来月 (2007年5月) の「第 2 週の月曜日」は 7 日? 14日?
  2. 残念ながらここのサーバは PHP のバージョンが 4 なので、これらを使えない。

電子テキストの文字校正

印刷を目的としない文章を、修正個所を判りやすく指示 (つまり「校正」) しながら遠くにいる人ととともに作っていくにはどうするか。メールでやりとりすることを念頭において考えていたことをまとめてここにメモしておく。

ごく短いプレーンテキスト

「2 段落めの最初の文、ふたつめの『ロボット』を『人間』に置換」という感じの、電話で口伝えするような、長たらしい指示。 ごく短い文書で校正個所が少ないときにはこれでも伝わるが、増えてくると嫌になる。

指示を受け取った側 (この文章では「著者」と呼ぶことにする) は、その指示にしたがって元の文書を書き換える。

改行が少ない文書

自然言語の単純なテキストファイルや HTML の文書など[1]

校正の内容は、プレーンテキストなら文字種や大きさはないので、ほとんど削除・挿入のみ (置換は「削除して挿入」で表現できる) となる。

タグによる校正記号

<del> と <ins> で表現する。校正に関するコメントは著者と校正者で了解して <comm> にするとか、あるいは HTML の範囲内のタグを流用する。

ロボットは他の<del>ロボット<comm>これは「人間」のはず</comm></del><ins>人間</ins>に危害を加えてはならない.

HTML を知っている人には意味が通じやすい。しかし、人間に伝えるためのもので、実際に HTML のタグとして機能するわけではない[2]ので注意が必要である。エディタは HTML 対応のもので代用できるかもしれない。

校正の作業

校正者は対象ファイルにエディタで直接タグを書き込んでいく。置換の場合、<del> と <ins> が連続することになる。

ruby を使える環境なら Docdiff (単語あるいは文字単位の差分でとる) を利用する方法がある。docdiff.conf

tag_del_start           = <del>
tag_del_end             = </del>
tag_add_start           = <ins>
tag_add_end             = </ins>
tag_change_before_start = <del>
tag_change_before_end   = </del>
tag_change_after_start  = <ins>
tag_change_after_end    = </ins>
と設定しておく。

元ファイルを別に保存しておき、対象ファイルは校正後の形に書き換える。

docdiff --format=user example.txt.orig example.txt
で校正記号入りテキストを作成する[3]。コメントには対応していないので、その後エディタで開いて書き込む。

著者の作業

校正記号入りテキストを受け取った著者は、エディタで <del> のタグで囲まれた部分 (もし校正者の指摘を受け入れられなければ <del> ではなく <ins> で囲まれた部分) や <comm> で囲まれた部分を削除する。さらに <ins> タグを (囲んでいる内容は残して) 削除する。

HTML 文書

HTML 文書の場合、上記の <del> や <ins> のタグを使う方法では校正記号が目立たない。また、タグ自体の校正をするときに特に混乱する。たとえば

<ul>
  <li>ロボットは他の人間に危害を加えてはならない.</li>
<del></ol><comm>閉じタグが間違っています</comm></del><ins></ul></ins>
となってしまう。そもそも上記の方法で用いたタグは人間のためのもので、著者と校正者で了解できていれば何でもよく、<del> や <ins> でなければならないわけではない。

それを一般化した 真鵺道 Manued というものがある。もちろん HTML 以外のプレーンテキストにも使える。規則は少ないのですぐに覚えられる。たとえば上の例は

<ul>
  <li>ロボットは他の人間に危害を加えてはならない.</li>
【</ol>/</ul>#閉じタグが間違っています】
のように書くことができる[4]

真鵺道 Manued の最大の特長は機械処理が可能という点である。Emacs (系) には manued.el がある。しかし残念ながらほかのエディタの対応は見かけない。

校正の作業

対象ファイルにエディタで校正記号を書き込んでいく。Emacs で manued.el を使えば楽である。

校正ファイルの先頭に、アプリケーション (Emacs の manued.el のみなのか) に対する修正記号定義コマンドと、人間に対する注意書 (著者と校正者がしっかり了解していればなくてもいい) を付ける。

defparentheses  [ ]
defdelete       /
defswap         |
defcomment      ;
defescape       ~
deforder        newer-last
defversion      0.9.5
校正記号は次のとおりです。
[α/β]          αをβに変更する
[/α]            αを挿入する (変更の特殊形)
[α/]            αを削除する (変更の特殊形)
[α|γ|β]       αγβをβγαに並べ換える
[α||β]         αβをβαに並べ換える(並べ換えの特殊形)
[;コメント]    校正に関するコメント

ruby を使える環境なら、Docdiff (単語あるいは文字単位の差分でとる) を利用する方法がある。

元ファイルを保存しておき、

docdiff --format=manued example.txt.orig example.txt
とする。

真鵺道 Manued 自体は上述の定義コマンドで修正記号を変更できる。しかし Docdiff は真鵺道のデフォルトの修正記号 (上記のもの) に固定されていて自由に変更できない。また Docdiff はコメントには対応していないので、後でエディタで書き込んでいく。

著者の作業

もし著者が Emacs で manued.el を使えるなら、受け取った校正記号入りテキストで、個々の校正記号についてオリジナルか修正指示のどちらを選択するかを簡単な操作でできるし、校正記号を含まない元の文書または修正された文書の全体を取り出すことも簡単にできる。

もしそれを使えない場合は、前述のタグ表現の場合と同じように、いちいち校正個所を直していく。

改行を多く含む文書

もちろん適宜改行されているテキストに対しても上記の方法は適用できる。 そのほかに diff を使うことができる。元ファイルを保存しておき、

diff -u example.txt.orig example.txt
とする。ディレクトリごとまとめて扱うこともできる。 プログラムのソースコードなどに向いている。よく改行されている HTML 文書や TeX の文書に使うこともできる。

校正コメントは使えない。

著者は diff ファイルを受け取ったら、patch で元ファイルに反映させることができる。

書き換えてしまう

ここまで「変更個所および変更内容をわかるように指示する」ことに留意して、ファイルを直接書き換えてしまう (オリジナルを残さずに) ことは考えなかった。

だんだん「校正」から逸れてきたが、履歴がきちんと残るのなら直接書き換えてしまうということも考えられる。メールでのやりとりではないが Wiki という手もある。しかし短い単なるテキストを扱うには大袈裟すぎる。それに校正段階では一般に公開しないのが普通で、そのためには認証のしくみをつけて、いちいちログインしてもらうようにしなければならない。いわゆる一般人にはそれだけでも敬遠される。

cvs, subversion などと適切なブラウザの組み合わせも、変更点がわかるので「校正」と言えなくもない。しかしこれもプログラマやそれと同じ程度にコンピュータに興味を持って向かい合える人以外にはなかなか受け入れてもらえないだろう。

朱を入れる

OpenOffice.org Writer, MS Word, PDF などの文書に「朱」を入れる。それぞれのデータを扱えるソフトを著者と校正者がそれぞれ所有していて、その「コメント機能」の類を使えることが前提となる。商用ソフトが必須となったり Linux では揃えられなかったりと障壁が大きい。

文字種や大きさ、レイアウトなどの校正は、ここで言う文字校正の範囲を越える。文字校正だけなら、テキストに変換して上記の方法を適用することも考えられる。

最後の手段は、紙にプリントして朱を入れる。もはや「電子テキスト」からも逸脱する。ついでなのでここにメモしておくが、「印刷校正記号 JIS Z 8208:2007」は 2007-01-20 改正になっている。これは有料となっているが、日本工業標準調査会のサイトで、JIS規格番号「Z8208」で検索すれば閲覧できる。

  1. HTML の地の文で適当に改行を入れると、たいてい微妙に空白がはいってレンダリングされる。英語などでは改行は単語間空白という取り扱いで問題ないのだが、日本語では格好悪いので 1段落のあいだ改行を入れないことが多い。pTeX はこのへんをうまくやってくれるので気にせず適当な文字数で改行をいれたほうがいい (エラーの際に行番号が表示されるので場所を特定しやすい)。
  2. 全体を <pre> で囲むだけでもブラウザでそれなりに見えるかもしれない。
  3. Docdiff には –format=html というオプションもある。変更点を HTML で美しく表示できるようにするものである。しかしその表示のためにたくさんのタグなどがはいるので、著者が校正結果を抽出するのにやや手間がかかる。
  4. defparentheses を【 】、defdelete を/、defcommentを#と設定している場合。

日本語スタイルガイド

Wiki 書式をやめて(簡略)HTML で書くようになったら、そのほうがむしろ書きたいように楽に書けることが判って、なんだという気がしている。

さてそうすると内容以外の、文章のスタイルについても気になってきた。それは何もここに書くときだけではない。自分のなかではこれまでの経験からある一定のルールというのが出来ているのだが、重要度 (自分にとっての) に応じてブレるものもある。

そこで文章のスタイルについてのガイドラインについて、検索してみた。Gnome.JP の Wiki を経由して、タイムリーにも出たばかりの What’s Translation@Sun日本語スタイルガイド を発見した。元々の Sun 内部の指針(【追記】リンク切れ)を再編されたものということだ。英語から日本語への翻訳を前提に書かれているが、はじめから日本語の文章を書く場合にもよく当てはまる。いったん通読したら普段は クイックリファレンスを見るだけでも随分役に立ちそうだ。何しろ個人や小さなコミュニティではこのような明文化の作業はしない (できない) ので、たいへんありがたい。

自分のなかのルールといくつかの点で違いはある。たとえば感嘆符・疑問符は使わない、としている点。横書きの、特にブログのような場面では既に日本語の一部として使用可能だと思う。さらに、もし使う場合 (メッセージでは使うとされている) には日本語と疑問符のあいだにスペースを入れるとしている点も疑問に思う。そのほか漢字とかなの使い分けのなかにもいくつか自分の基準と違うものがある。

しかしそれらを除いて大部分はたいへん有益な内容である。カタカナ語の末尾の長音は、自分のなかでも場面ごとにブレが大きく気になっていたので、100% 同意できるかどうかは別として、大いに参考になった。元々が技術文書、マニュアルを対象として作られているので、それ以外にそのまま適用できないかもしれないが、参照資料のひとつとして活用したい。

【追記】この記事を書いたときとリンク先が変更になっているので、修正しました。